画像生成AIとは?活用事例やメリット、代表的なサービスについて

2022年末に彗星のごとく現れたChatGPTをはじめとした生成AIは飛躍的な進化を遂げており、中でも画像生成AIはビジネスシーンでの活用が本格的に始まりつつあります。

本記事では、画像生成AIとは何か、その仕組みといった基本的なことから、具体的な活用事例や実際のサービスの使用感、活用する際の課題まで余すことなくまとめました。

画像生成AIとは?

画像生成AIとは、人間が入力した指示テキスト(プロンプト)に対して自動的に画像やイラストを生成するAIツールです。

画像生成AIを用いたサービスは、大きく以下の2種類に分けられます。

・Image to image

ラフイメージを読み込ませると、より完成度を高めた画像やイラストを生成

・Text to image

キーワードや文面を入力すると、それらからイメージできる画像やイラストを生成

画像生成に活用されている技術として、VAE(変分オートエンコーダ)、GAN(敵対的生成ネットワーク)、TransGAN、DALL・E、Diffusionが挙げられます。

いずれも手法は異なるものの、キーワードやテキストからの画像生成を可能とするものです。

GAN(敵対的生成ネットワーク)、Diffusionモデルについてはこちらの記事でご紹介しています。

画像生成AIの活用事例

画像生成AIについて調べられている皆さんの中には、すでにビジネスの場や街中で画像生成AIによって生成された画像を見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。

実際にどのような場で活用されているのか、具体的な活用事例をご紹介します。

ロゴ・アイコン作成

1つ目は、企業やブランドのロゴ、またSNSアカウントやWebサイトのアイコン作成です。

画像生成AIツールによっては一つのプロンプトから数パターンの画像・イラストを生成できるため、デザインのアイデアが決まらない場合にはその中から細部の調整をしてロゴやアイコンを完成させていくことが可能となります。

エンタメ制作

2つ目は、ゲームやマンガなどのエンタメコンテンツ制作です。

例えばゲーム制作においては、背景デザインやキャラクターなどの各種グラフィックデザインの自動生成が可能となります。

これによりゲーム開発における各種デザインの考案、画像制作にかかる時間や手間、金銭的コストを劇的に削減することができます。

またマンガ制作においては、考案したストーリーやキャラクター設定をもとにAIで画像生成し、それをつなげてマンガを制作するといった活用法もあります。

WebサイトやSNSコンテンツ作成

3つ目は、Webサイト制作やSNSなどで使用・投稿するコンテンツ作成です。

Webサイト制作においては、Webデザインが自動生成できるため、独自のデザインパターンを用意してユーザーの嗜好に合わせてパーソナライズしたWebサイトを表示させることができます。

コンテンツ作成においては、SNSの投稿やブログ記事のアイキャッチ画像などを自動で生成できます。プロンプトを少し変えるだけで異なる画像を生成できるため、有料ストックフォトと比較して自由度も高いです。

医療分野での活用

実は、画像生成AIは医療分野でも活用の可能性を見せています。

具体的には、患者のプライバシー保護を目的として複数の医療画像を類似度をもとに合成したり、この画像合成によりプライバシーの課題をクリアした画像をAIに学習させ病状の進行パターンを蓄積し、患者の病状の進行をシミュレーションするなどといった使われ方がされています。

プロモーションへの活用(CM制作、商品画像作成)

最後は、CM制作や商品画像作成などのプロモーションへの活用です。

例えば商品画像の作成ではこれまで、撮影セットの用意や状況によってはカメラマンの手配など手間やコストがかかっていました。

しかし画像生成AIの商品画像の自動生成により、顧客に応じて商品画像のパターンを使い分けたり、季節に合わせて背景を調整するといった画像の微調整が可能となりました。

画像生成AIのメリット

ここまでは画像生成AIの基本的な情報や活用事例についてご紹介してきましたが、画像生成AIを活用するメリットについて5つご紹介します。

クリエイティブ制作の民主化

1つ目は、あらゆるクリエイティブ制作の民主化です。

これまで、デザインはデザイナーがするもの、Webサイト制作はエンジニアがするものと思われてきました。

これらの制作には専用ソフトや専門知識が必要で、それらがない人や企業はプロに委託するしか手段がありませんでした。

しかし今後は生成したい画像・イラストのイメージを文字で表現できさえすれば、誰もが画像生成AIを使ってあらゆるクリエイティブを制作することが可能になります。

このように、画像生成AIによりクリエイティブ制作は誰もが行える工程の一つとなりました。

作業効率の向上

2つ目は、作業効率の向上です。

通常は画像・イラスト作成に数時間~数日かかりますが、画像生成AIを使えば数秒~数分で画像を作成できるため、効率的に作業を進めることが可能となります。

作業の効率化により短縮した時間を使ってこれまではできなかった工夫を考える余裕が生まれることも期待できます。

コストの削減

3つ目は、画像作成にかかるコストの削減です。

画像生成AIは人間とは異なり大量の画像を常に高品質に編集・加工することが可能です。

そのため、これまでデザイナーや専門家に依頼する際や修正依頼が必要な際に都度都度かかっていた費用を削減することができます。

マーケティングやブランディングの強化

4つ目は、マーケティング/ブランディングの強化です。

画像生成AIはプロンプト作成者の資料作成スキルや技術レベルに関係なく、ロゴ・アイコン作成やCM制作・商品画像作成、SNS投稿コンテンツ作成を高品質で行えます。

それにより、資料におけるメッセージの明確化や視認性向上が進み、集客効果やブランド認知向上に寄与することになるのです。

表現の幅の拡大

5つ目は、芸術的な表現の幅の拡大です。

画像生成AIはプロンプト作成者の想定していなかった新しいデザインや芸術を生み出す可能性を秘めています。これにより、これまでにはない視覚体験を作り出すことが可能です。

例えばピカソの絵画と現代アートに絞って学習すれば、これら2つを融合した新しい芸術を生み出す可能性が考えられます。

このように画像生成AIは新たな芸術や視覚体験を作り出すポテンシャルを秘めています。

画像生成AIのデメリット

前項では画像生成AIのメリットをご紹介しましたが、発展途上の技術であるためデメリットも存在します。その中でも代表的なデメリットを2つご紹介します。

品質が担保されない

画像生成AIは学習したデータに基づいて画像を生成しており、学習データの品質が画像の品質に直結します。学習データに低品質の画像が含まれていれば、生成画像も低品質になる可能性があります。

また、学習データに偏りがなくても、整合性のとれていない不自然な画像(特に細部の作り込みが得意ではない)の生成が起こりえます。

画像生成AIはまだ開発途上であるため、生成画像の品質については利用前に確認しておくことをおすすめします。

日本語対応しているサービスが少ない

ほとんどのサービスが英語で開発されている影響で、日本語でのプロンプト入力ができない場合があります。

これは、日本語が英語よりも難易度が高いことや日本語の画像が少ないことなどが影響していると考えられます。

このように、日本語対応のハードルの高さが日本での画像生成AIの普及に対してデメリットになっているといえます。

画像生成AIおすすめサービス7選

次に、画像生成AIのおすすめサービスを7つご紹介します。

Stable Diffusion

https://stablediffusionweb.com/

Stable Diffusionは、2022年に英国のAI開発企業であるStability AIが公開したサービスです。

生成される画像のクオリティの高さや生成にかかる時間の速さといった点から最も著名なサービスと言えるでしょう。

またStable Diffusionは当時初めて無料使用・生成画像の商用利用可に踏み切りました。これにより世界中の企業が画像生成AIに注目するようになったのです。

Midjourney

https://www.midjourney.com/

Midjourneyは、Midjourney社が2022年7月にオープンベータ版を公開し、現在でも世界中で利用されているサービスです。

画像生成の手順は他サービスと違いはありませんが、Midjourneyは唯一Discordというアメリカのメッセージアプリのアカウントが必要となります。

DALL・E2

https://openai.com/dall-e-2

DALL・E2は、ChatGPTを開発したOpenAI社が開発・提供しているサービスです。

画像生成AIとしては唯一、キーワードのみならず文章からの画像生成ができます。ChatGPTで大量の文章データを解析するノウハウがあり、それを活用したDALL・E2ならではの機能です。

Canva AI

https://www.canva.com/ja_jp/login/

Canva AIは、無料で使えるオンラインデザインプラットフォームを提供するCanvaが提供するAI画像生成ツールです。

Canvaにログインしアプリの中からText to imageを選択するとはじめられます。Text to imageでは、単なるイラストや画像だけでなく、背景画像パターンやコンセプトアート、3D画像などの多種多様な画像出力が可能で、デザインプラットフォームならではのサービスと言えます。

また、Canva text to imageは日本語にも対応しています。

Adobe Firefly

https://www.adobe.com/jp/sensei/generative-ai/firefly.html

Adobe FireflyはAdobeが2023年3月から提供を開始したサービスで、Adobeアカウントがあれば利用可能です。

テキストからの画像生成はもちろん、生成画像の修正や画像の組み合わせなど柔軟な画像編集に対応しています。加えて著作権にも配慮され、日本語にも対応しており、初心者の方でも始めやすいサービスです。

DreamStudio

https://beta.dreamstudio.ai/generate

DreamStudioは、前述のStable Diffusionのオープンベータ版としてStability AI社が提供しているサービスです。

オープンベータ版といえどすでにUIが洗練されており、英語対応のみではあるものの比較的使いやすくおすすめです。

NovelAI

https://novelai.net/

NovelAIはAnlatan社によって運営されている、小説やイラストを生成できるサービスです。

サービス名の通り文章生成がメインではありますが2022年10月に追加された画像生成も注目を集めています。キャラクターイラストを描く精度が高いという点が最大の特徴です。

現状は有料プランのみの提供で、無料では利用することができません。

画像生成AIにおける課題・注意点

続いて、画像生成AIの課題や利用する際の注意点をご紹介します。

出力結果の真偽確認

画像生成AIのデメリットでも解説した通り、学習データの偏りや何らかの影響により正しい画像が生成されない可能性があります。

例えば人間の腕が4本ある、顔のパーツの位置がずれているなど、構造上ありえない表現が生まれるおそれがあります。

そのような生成画像における矛盾を見つけ、修正していくことが重要です。

著作権や肖像権侵害リスク

画像生成AIを使用する際、例えば学習データに著作権がある画像を用いる場合は、その学習の結果AIが生成した画像にも著作権が発生する可能性があります。

解決策として、著作権フリーの画像を学習に使用したり著作権所有者に許諾を得るなど、学習データ提供者・AI開発者双方にとって安全性や説明可能性を維持することが大切です。

フェイク画像や悪用リスク

画像生成AIは悪意を持って偽の画像生成に使われる懸念があります。例えばフェイクニュース記事に使用されたり、なりすましに使用される可能性があります。

これらに対し、今後法制度の整備や倫理的観点からの検討が必要になるでしょう。

収益分配の偏り

画像生成AIにはこれまで解説してきた通り、学習データが非常に重要です。

しかし、学習データとして創作者・権利者が作品や画像を提供しても、彼らへの価値還元が適切になされていません。

例えば、5億円かかった画像生成AIプロジェクトで10億円の売り上げを立て、このプロジェクトにデータ提供者が1万人いた場合、利益を単純に分配しても1人あたり5万円の利益しか得られないのです。

このような収益分配構造を整備していくことも、今後の画像生成AIの課題といえるでしょう。

実際に画像生成AIを使ってみた

ここまで画像生成AIのさまざまな一面について紹介してきましたが、実際に画像生成AIを使ってみるとどうなのか、気になりますよね。

今回はStable Diffusion、Canva AI(Text to image)の2つのサービスを使って画像生成を行ってみました。これらの使用感や生成された画像の違いについて次にご紹介します。

ここでは例として、空を飛ぶ猫の画像を生成します。

プロンプトは以下の通り、キーワードベースで特徴を並記しています。

“aerial photography of city, a flying cat with wing, sunny day”

日本語で言うと、「市街の空中写真、羽のついた空飛ぶ猫、晴れの日」です。

Stable Diffusion

Stable Diffusionでは、以下のような画像が生成されました。

概ねイメージ通りではあるものの、左前足の構造に違和感があったり、前足が両方そろっていなかったりと、若干の調整が必要と感じます。

使用感としては、プロンプト外で画像サイズや画像スタイル(写実的かイラスト風かなど)を選ぶことができ、細かいニュアンスをプロンプトに依存しないような対策がとられており、比較的使いやすいのではないかと感じました。

また、プロンプト入力後、画像生成にかかった時間は約2分程度です。

Canva AI(Text to image)

Canva AI(Text to image)では、以下のような画像が生成されました。

本来は日本語でも可能ですが、今回は条件を合わせるため英語のプロンプトを使用しています。

市街のイメージは問題ありませんが、猫の描画についてはまだまだプロンプトによる改良の余地がありそうです。

使用感としては、プロンプト作成前に画像サイズを指定できたり、クラウドに画像保存ができたりと使い勝手はよいと感じます。

また、プロンプト入力後画像生成にかかった時間はStable Diffusion同様、約2分程度です。

まとめ

画像生成AIは仕事の常識を覆すようなメリットがある反面、権利問題や出力の不確かさなどの課題もあり、まだまだ開発途上の技術です。

ですが、技術は日に日に進歩していくものであり、自分が出す指示次第で出力画像を洗練させる、つまりAIを育てることができます。画像生成AIサービスを利用する中で最新の技術をぜひ体感してみてください。

本記事が画像生成AIについての理解を少しでも深める一助になりましたら幸いです。

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